東芝の初ネットブックPC NB100

ネットブック市場にダイナブックの東芝が参入


【概要】

■ノートPCの老舗がネットブックを作ったことの意義

 「dynabook SSシリーズ」は、RXシリーズで息を吹き返したかに見えたが、決してモバイルPC市場の起爆剤とはならなかった。残念ながら、モバイルPC普及の起爆剤は、EeePCに代表されるネットブック(UMPC)だった。

 持って運べる大きさと価格の安さが両立されれば、性能は多くを求めないという潜在的ニーズがうまくキャッチアップされた結果だと思う。

 別に外に持ち出さなくとも、筆者のように、寝床でごろごろしながら文章を作成するといった用途には、ネットブック(UMPC)のような安いPCがちょうどいい。(と言いながら、未だにSS 2100を使っているわけだが)

 かつて、「dynabook SSシリーズ」など1スピンドルノートは、外部記憶媒体が無いために取り扱いが難しい上に、性能も中途半端なため、1台目を持っているマニアが2台目として購入する「サブノート」という位置づけでしかなかった。

 しかし、PentiumM搭載のS7/SS 2100辺りからは熱対策の影響でCPUの成長が鈍化したことや、OSの進化がXPで足踏みしたことから、「dynabook SSシリーズ」も性能面では1台目として問題なく使える程度の物となった。

 あまり世間では言われていないが、フロッピーディスクドライブが無くてもUSBメモリSDカードが十分に大容量化し、かつ安価になったことで、リムーバブルメディアの持ち歩きに苦労しなくなった事や、ハードディスクが大容量化したおかげでCD-ROMを取り替えながらソフトを使うという場面がほとんど無くなった事も、1スピンドルのモバイルノートPCにとって追い風になったように思う。

 しかし、残念ながらモバイルノートPCは主流になり得なかった。小型軽量化のためのコストという理解をしていたが、結果的に値段が割高であった。

 同じ金額を出せば、15インチ液晶付きのさらに高性能なノートPCも手に入る。Celeron付きの廉価なA4ノートPCであれば、半額の10万円程度で手に入るかもしれない。
 どうしてもモバイルが必要な人でなければ、わざわざ倍の投資をするだろうか。

 東芝もLenovoPanasonicといった競合メーカーへの対抗上、小型軽量高密度化を極限まで突き詰めたRXシリーズの登場に至ったわけであるが、この高機能化は原価の高騰を招き、モバイルPCを実売価格が20万円を超える「プレミアム」商品にしてしまった。
 明らかに2〜3年前の「SS 1600/SS SX」の頃より値段が上がってしまっている。

 結局このあたりが「dynabook SSシリーズ」など、モバイルPCが法人向け中心になってしまい、なかなか個人に普及しない代物になってしまった原因と思われる。(推測でしかないが、個人でdynabook SS RXを買う人は少ないと思う)

 実際のところ、モバイルPCのニーズは無いわけではなかった。むしろ、持ち運び可能なPCを欲しいと思いながら値段の関係で購入に至らなかった層が多かったと思われる。

 5万円と廉価なEeePCの登場は、潜在的需要を顕在化させるのに十分なインパクトがあった。

 購入時に、イー・モバイルの2年契約をすることで、ほとんどタダにする……といった、電器店の販促(反則?)もあってお買い得感がさらに増した事も事実であり、下手に携帯でパケット定額プランを利用するぐらいならネットブックを買うという考え方は、非常に合理的だと感じる。

 EeePCが1年も経たない間に150万台以上を売ったことで、元々全部併せて150万台の国内モバイルPC市場に地殻変動が生じた。

 もう、高いパソコンだけでは商売にならない。流れが変わったことに、国内大手メーカーで最初に対応したのが東芝だった。(発表は富士通が早いが、鬼が笑う話だった)

 恐らく東芝は、もはや市場調査の必要もないぐらいの逆らえない潮流に対し、敢えて真っ正面から立ち向かうことで、乗り切ろうと考えたのであろう。

 東芝初のネットブックPC「NB100」は、「dynabook SSシリーズ」のアンチテーゼとして登場した。

 「dynabook SSシリーズ」のように最先端の技術は投入しない代わりに、価格を下げ、買いやすいモバイルPC。

 前置きが長くなったが、NB100で、空前の大ヒット作となったEeePCを迎撃できるだろうか。

【各機能ごとの詳細】

■スペックは他社並

 本機発表時点でのネットブックのトレンドは、500ドル程度の価格とATOM1.6GHzプロセッサ+1GBメモリ+WinXPHome+1024×600液晶に、120GBのHDDか数GBのディスク・SSDを搭載するのが主流のようである。

 NB100は前者のHDDを採用した。耐衝撃性は残念だが、容量が大きいため、むしろ実用的である。

 それにしても、平凡だ。特に、東芝らしい点は何もない。大容量SSDを発表したが、価格が折り合わなかったのであろう採用されていない。

 ハードディスクを搭載した弊害か、バッテリーの持続時間は短いようである。とはいえ2.9時間あれば、陸サーファーならぬお座敷モバイラーには全く問題の無いレベルだ。

■サイズ比較

SS1600   268mm(幅)×210mm(奥行)×27.8mm(最薄部)〜34.6mm(高さ) 1.1kg
S30    283.8mm(幅)×196.6mm(奥行)×26.9mm(最薄部)〜35.5mm(高さ)1.19kg/1.24kg
NB100  225mm(幅)190.5mm(奥行)×29.5(最薄部)〜33mm(高さ) 1.05kg
Libretto70 210mm(幅)×115mm(奥行)×34mm(高さ) 0.85kg
LibrettoL5 268mm(幅)×167.2mm(奥行)×20.5(最薄部)/29.3mm(高さ) 1.1kg

 NB100を見ると、何となくLibrettoの雰囲気も感じるので、初期モデルや「デブレット」と呼ばれたLibrettoLシリーズと比べてみた。こうしてみると、リブレットって小さいのね。

 厚めのSSシリーズと比べても分厚い。設計上全く無理をしていないことが分かる。

 液晶が小さく、幅が随分小さいくせに重いのは、軽いが高いマグネシウムパーツを避けて、安い金属とプラスチックの厚みで剛性を確保したのだろうなと推測できる。

 肉厚ではなく機能を削って軽量化するというアプローチは面白い。普通のノートの作り方でも、1スピンドル化と小型液晶で筐体を小さくすれば、最新鋭モバイルPC並に軽くできると言うことだが、ネットブックの中では特筆出来るほどの物ではない。

■デザイン

・パッと見てグー?

 液晶カバーの艶ありコーティングが、本機の見所か。傷は大丈夫なのだろうか。ちょっと心配。

 ずんぐりむっくりのプロポーションなどは、かつてのSS4000シリーズ辺りを彷彿とさせる。

■使い勝手

・キーボードは小さい

 キーピッチ15.9mmは、筆者の経験則で言うとかなり狭い。キー配列は比較的マトモな方だと思うが、もう少し大きくしても良かったのではないだろうか。というか、大きい方が良いと思います。

 他社製品では、15mm〜17mm辺り。個人的には、違和感無くブラインドタッチするためにはキーピッチ18mm以上が望ましいと思う。

 実際、ビックカメラの店頭で指を置いてみたが、微妙に快適なブラインドタッチが出来るサイズを下回っていると感じた。指先の小さい人なら問題ないかも知れないが、本気でガシガシ入力するなら、もう気持ち大きい方が嬉しい。

・小さいが綺麗な液晶

 8.9インチワイド型で1024×600という解像度も、平凡。
 LEDバックライトのClearSuperView液晶。ツルテカ光沢液晶ですな。

 バックライトが恐らく長寿命だと思われるので、この点は良いと思います。

・デジカメ母艦用インターフェース

 SDカードスロットが、SDHCに対応していたり、メモリースティック/メモリースティックPROにも対応している辺りは、デジカメ母艦としての用途も視野に入れているという事であろう。
 やたら富士フイルム社のデジカメを買ってしまう筆者としては、xDピクチャーカードにも対応してくれると嬉しいが、1000円程度でアダプタが購入できるから贅沢は言うまい。

・電波系も強い

 無線LANは当然の事ながら、Bluetooth標準装備はエライと思う。国内標準仕様のRXには付いていないというのに。(海外モデル、直販モデルには付いている)

【前途多難な東芝のネットブック戦略】

■発売前に値下げ(笑)

 複数ソースで報道されているが、多くの店で予約価格74,800円だったものが、10月16日に発表されたNECの「LaVie Lite」に対抗するためか、急に5,000円下がって6万円台に突入したとのこと。

 ただ、値下げしてもなお「LaVie Lite」は65,000円だったということで、微妙にまだ負けている。

 ネットブックなので、大してスペックは違わないのだが、キーボード優先で開発されたということで、「LaVie Lite」はキーピッチ17mmというネットブックの中では比較的マトモなキーボードを用意しており、この辺りも良さそう。

 NECは大衆に迎合した失敗作も多いが、かつて「モバイルギア」という硬派なヘビーモバイラー向け端末を作ったこともあり、割と良識を持った開発陣がいるように見受けられる。

 なんか、ネットブック専用ページを作って比較検証してみたいが、早晩NB100は再値下げすること必至だと思われる。今の「TOSHIBA」にブランドプレミアムはあまり期待出来ないので、富士通も参戦して三つどもえになったら、ドンドコ値下がりするような気がする。


リンク

ネットブックPC NB100(2008年9月)

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作成日:2008/10/1
最終更新日:2009/2/11

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