【概要】■新しいモバイルノートのポジショニング RX2は最終的に液晶を通常型に変更したコストダウン版のRX2Lに移行し、消滅。 というか、「SS」の文字を省いた時点で、スリムショックではないということ。 高性能は、たくさんの人に使われてこそ、意味がある。 というキャッチコピーや、RX2の販売戦略を素直に受け取ると、要するに小さくて高いパソコンを作っても売れないから、買ってもらえる値段に下げましたということだろう。 RX2は確かに良い機種だったと思うが、残念ながら空前のネットブックブームと、スマートフォンブームの陰で、本来想定していた立ち位置を見失ったと見える。 実際の所、ただ持ち歩きのためのパソコンが欲しいだけなら廉価なネットブックで構わないし、クロックが低い割に値段は高いという超低電圧版CPUは、デスクトップ機と比べると半分ぐらいの性能でしかなく、結局の所軽量かつ高機能にこだわったところで誰も嬉しくないことに気づいてしまったのだと思う。 さらに輪を掛けて、iPhoneやiPadに代表されるスマートフォン、スマートパッドの台頭である。ネットやOffice文書を眺めたり、メールをやりとりしたりといったことは普通にできてしまうので、いよいよ高価だがパソコンとしてそこそこ使い勝手が良く、結構軽いというRX2の存在意義が否定されていたと思う。 そこで、位置づけを少し見直し、可搬性は維持しつつ、デスクトップ機の代替に使えるだけの十分な性能を、なるべく値段が高くならないように実現しようとしたようである。 そう考えると、合点がいく。 ■残したもの、変えたもの先代RX2から継承したのは、乱暴な言い方をすると主に軽量PCを作る上でキモとなる筐体設計技術や、省電力技術といった中身の深い部分だけで、目に付くところは全て再設計である。 見た目は後述するが、筐体色がシルバーからブラック塗装に変更されていたり、液晶が13.3型に大きくなったことで、全体的に大きくなったことが目に付く。 そして、キーボードがタイル型に変更され、デザイン重視になった印象を受ける。 前回はCoreアーキテクチャ世代のIntelGS45Expressベースで、今回は管理機能(vPro)対応のQM57と、スタンダード版HM55ベースの2本立て。Nehalem世代のClarkdaleアーキテクチャ対応と、マザーボードが世代交代している。 実際に大きく変わったのは、これまで超低電圧版CPUを使ってきたものが、今回から突如通常版に切り替わったこと。Lenovoなどは以前から採用モデルがあったが、東芝には無かった。 おそらく、筐体の設置面積が広がったために、熱設計しやすくなったことも好影響していると思われる。 とまぁ、モバイル機能は重視しつつもCPUを強化し、「サブノート」ではなく、持ち歩けるメイン機を目指したようである。 ■筐体が新しくなったまず、パッと見て大きくなった。これは、 13.3型ワイド液晶に切り替えた影響である。解像度は1366×768と、先代の1280×800より横が広くなり、縦が縮んだ。 16:9仕様の液晶が流行ということなのだろうが、Win7はタスクバーが大きくなってるので、縦方向768ドットのままは……。(横に持っていくか?) また、タイルキーボードと称する、アイソレーションキーボードに変わった。 特徴として、爪が長くても隣に引っかからなくて押しやすかったり、ゴミが入らなかったりと言ったことを挙げられる事が多いが、他にもフレームで強度を出しやすいといったメリットがあるらしい。 パームレストにクリアを吹いたりして、一応耐久性に考慮してある点は評価する。 また、黒塗りでヘアライン加工された天板は、剥げなければいいのかなと思う。 底面を見ると、HDDを交換しやすくなっているのはGood。そんなとこばかり見てと言われそうだが、一番壊れるところだけにメンテナンスできるか否かというのはかなり重要である。 ■性能が著しく向上CPUがCore i5 520M(2.4GHz ターボ・ブースト時2.93GHz)で登場し、9月末のマイナーチェンジ時にCore i5 560M(2.66GHz ターボ・ブースト時3.2GHz)に変更されている。 また、廉価版としてCore i3 350M(2.26GHz)が設定され、9月末にCore i3 370M(2.4GHz)に変更されている。 Core i3とi5の違いはターボブーストの有無ぐらいに思っておけば良く、クロック数分の違いしかないと思っておいて良いと思う。 単純にクロック数で比較してはいけないが、先代RX2が1.2GHz〜1.4GHzだったので、倍ぐらいのCPU性能である。 2011年春モデルのR731では、さらにCore i7-2620M(2.7GHz)、 Core i5-2520M(2.5〜3.2GHz)、Core i3-2310M(2.1GHz)となった。 2012年夏モデルのR732では第3世代CoreのCore i7-3520M(2.9GHz)、Core i5-3210M (2.5GHz)に変更。チップセットもQM77/HM76に仕様変更。 ■バッテリーも長持ち バッテリーは標準のHDDモデルが10時間、大容量で15時間。 実際に使った場合の印象とは乖離があるだろうが、標準電圧版CPUを使っているからといってバッテリーの持ちが悪くなっていないことには好感が持てる。 また、80%までしか充電しないモードがついたため、バッテリーそのものも長寿命が期待できる。何故今までついていなかったかが不思議なくらいだ。 【改造情報】HDD・SSD換装RX3やR730、あるいはR731の標準モデルを持っていて、SSDに換装しようとしている人は多いと思う。 あるいは、ハードディスクのまま大容量を求める人もいると思う。 インターフェースはSATA300。厚さは9.5mmの一般的な物が利用可能。R731以降、7mm厚が採用されたモデルもあるが、HDDの蓋にゴムやスポンジが貼ってあるのを剥がせば9.5mmに対応できるので、心配無用。 逆に、9.5mmのHDDモデルに7mmの薄型SSDを装着する場合は、中でゴトゴト動いてコネクタに負担を掛けないよう、詰め物をしましょう。 メモリ交換DDR3 SDRAMのスロットが2つ用意されており、裏蓋を開けるだけで容易に交換できる。この辺が、R63xに対してR73xのいいところ。 RX3とR730はPC3-8500(DDR3-1066)で、4GB×2=8GB。16GB搭載の人柱情報は無し。 R731とR732はPC3-12800(DDR3-1600)。メーカー表示では4GB×2が上限だが、実際は8GBのモジュールを認識するので、16GBまで増設できるようだ。 この辺りは、メモリソケットの数という物理仕様と、チップセットの仕様で決まっている部分なので、メーカー保証が無くても構わないならチャレンジしても良いと思う。 光ディスク装置交換これはほぼ専用品なので無理。 R730の上位機種から、2層メディアに対応しているので、必要な人はよく見て買おう。 【各機能ごとの詳細】■サイズ比較RX1 283mm(幅)×215.8mm(奥行)×19.5mm(最薄部)〜25.5mm(高さ)768g〜1.09kg RX3は細かいモデルがいろいろあるが、一応標準の61AAバッテリー付薄型液晶モデルということで比較した。軽いのは光学ドライブレスモデルだが、敢えてコッチを選ぶ必要は無いと思う。 大容量バッテリーの場合は高さが16.2mm、重さ150g増し。 薄型ではない液晶が、2010年6月モデルの場合は+1mmで、9月以降のモデルは+1.9mmと、仕様変更が発生している。 並べてみると、徐々に重くなってきてるのが分かりますね。 R732とR734を比較すると、底面が明らかに分厚くなっています。(上がR732、下がR734) ■インターフェース R730はUSB2.0×3で、うち1つがeSATA端子共用という、RX2以来の仕様。15pinアナログRGB出力も普通に装備。 SDカードスロットはSDHCだけでなくSDXCにも対応。より大容量のメモリカードも使えるようになった。 特記事項はHDMI端子が付いたこと。エコポイントのおかげで家庭用の大型テレビも普及したことと思うので、便利に感じる人も多いことと思う。最近、D-Sub等のアナログ系端子は付かないことが増えているので。 R731ではUSB3.0が新規に導入された。また、CardBus対応PCカードではなくExpressカードに変更することで、いよいよ増設カードの高速化にも対応。 R734ではHDMIが4K解像度に対応。Express CardやeSATA端子が廃止。 【モデル毎の相違】まさか4年も同じ基本設計で作り続けるとは思っていなかったが、この設計を使い回すというのが、コストダウンのポイントなのかもしれない。 その割に店頭価格は安くないのだが。 ■2010年夏モデル(RX3)半年も経ってないが、CPUが高速になっている。仕方ないけど、初期モデルを買った人はちょっと残念。 ■2010年秋冬モデル(R730A)R730に改名。海の向こうでの表記にそろえた物と思われる。 RX3のままマイナーチェンジをされるより、型番が少しずつ変わってくれると、筆者もわかりやすくて助かる。最初からそうすればいいのに……。 半年も経ってないが、CPUが高速になっている。仕方ないけど、初期モデルを買った人はちょっと残念。 ■2011年春モデル(R731B) コンシューマモデルの名称がR731になった。 1スピンドル版16Bと廉価版36BがCore i3-2310M 2.1GHzで、上位機の37B(HDD)、39B(SSD)がCore i5-2520 2.5GHz(インテル・ターボ・ブーストテクノロジーで最大3.2GHz)に増強。 PCカードスロットからExpressカードスロットに変更。 USBポートは2.0単体×1、2.0とeSATA兼用×1、USB3.0×1という構成に。 薄型液晶モデルが消滅し、全機種2mm厚いHD液晶に。 DVDを省いた1スピンドルモデル16BはExpressCardスロットまで省かれているが、重量は1.38kgとやや軽め。(SSDモデルは1.29kg) 外観はほとんど変わらないが、内容はほぼモデルチェンジである。 ■2011年夏モデル(R731C)Core i5-2520M/Core i3-2310Mに加え、最上位のSSDモデルはR731/38CはCore i7-2620M vProプロセッサー搭載で、2.7GHz(インテル・ターボ・ブーストテクノロジで最大3.4GHz)という高性能。 チップセットもvProプロセッサーに合わせてQM67チップセットを採用。 メインメモリが4GB×1(廉価版は2GB×1)になり、1スロット空きがある。また、増設時に標準搭載メモリが無駄にならないのはGood。 HDDモデルのHDDが新しくなり、500GB→640GB、250GB→320GBとそれぞれ容量アップ。ただし、無線LANがインテル Centrino Wireless-N + WiMAX 6150になり、802.11a非対応に。 SSDは据え置き128GB。無線LANも6250のまま。32ビットOSも選択可。実際は、32bitOSをわざわざ選ぶ必要性はほとんど無いけれど。 Webカメラや高速スタートモード搭載の文字が入ったのもここから。 ■2011年秋冬モデル(R731D)i7-2640M(2.8GHz)、i5-2520M(2.5GHz)、i3-2330M(2.2GHz)にパワーアップ。 Win7Proを選べる上位機が128GBのSSDで、Win7Home Premium(64bit)の機種は750GB、640GB、320GBとなった。 ■2012年春モデル(R731E)ラインナップが少し整理された。 最下位がCore i3から、i5-2450M(2.5GHz)に変更された。 また、上位機がメモリ8GBで128GBのSSD、下位がメモリ4GBでHDD640GB標準搭載となった。 ■2012年夏モデル(R732F)R732にモデル名を変更。 第3世代CoreのCore i7-3520M(2.9GHz)、Core i5-3210M (2.5GHz)に変更。 チップセットもQM77/HM76に仕様変更。 上位機の無線LANはCentrino Advanced-N + WiMAX 6250になり、802.11a復活。 最大メモリ搭載量が16GBへ。 ■2012年冬モデル(R732G)Windows8対応モデル。上位がPro64ビット、下位がコンシューマ向け64ビット版。 i3-3110M(2.4GHz)の下位モデル復活。 上位〜中位が256GBのSSDで、下位も128GBのSSDと、リッチ仕様になる。 ■2013年春モデル(R732H)CPUがCore i7-3540M(3.0GHz)、Core i5-3230M (2.6GHz)に変更。 上位機は256GBのSSD、下位機は1TBのハイブリッドドライブに。 また、上位機はブルーレイ搭載。 ■2013年夏モデル(R732J)R732Iは欠番の模様。 Win8Proモデルが消滅。 CPU、メモリ等は変更無し。1TBのハイブリッドドライブに一本化。 ■2013年秋冬モデル(R734K)R733ではなく、突如R734に。液晶はショボいままだけれど、外部出力4Kとか、クアッドコアCPU搭載などの関係で、4になったのかもしれない。 第4世代Core i7-4700MQ(2.4GHz)に変更。クアッドコアのため、クロック数は低くなったが、実際の処理能力は上がっている。 廃熱のためか、底が分厚くなった。 上位機は1TBハイブリッドドライブ、下位は1TBのHDD。 USB3.0が3つになり、SDカードが128GBのSDXCまで対応した。 R732から廃止されたインターフェースは、USB2.0/eSATAと、Express cardスロット。 直販モデルには、何故かアキュポイントが付いている。 【感想】■RX3時点での感想RX2の解説ページで、筆者はこんな事を書いていた。 個人的には、モバイル性能が多少犠牲になっても構わないので、もう数万円安く買いたい。 その通りの物が出てきた。 モバイル性能が犠牲になったが、安く高速なパソコンだぞ。さあ買うか?(笑) これだけ見ると、とてもいいと思います。実物見るとちょっと大きくて驚いてしまいましたが。 でもね、VAIO Zを見ちゃうと霞んで見えてしまうのは何でだろう。 VAIO Zの1920×1080フルHDはやりすぎかもしれないが、1600×900という表示モードはアリだと思っている。 というか東芝はいつも惜しいのだ。 ■R734を見てR732とは違うマシンとして扱おうとしたが、モデル末尾のアルファベットが続いていたので、結局同じ機種扱いとして、本ページに入れることにした。 息の長いモデルだが、液晶が2010年当時から変わらず1366×768ドットのままである。 ウルトラブックというMac Airに触発された軽量かつスタイリッシュなPCの登場や、Win8の登場後、タブレットとの融合を意識したPCが登場する中、本機は明らかに設計が古い。 値段が安いなら別に何も言わないが、特に安いわけでもない。 法人向けの大量納入や、あるいは大学生協での斡旋販売等でよく名前を聞くのだが、残念ながら、個人的に敢えて買いたいと思う魅力に乏しい。 液晶を高解像度の物に変えてくれたら、デスクトップ代替に考えても良いのだが、今のままでは外付けモニタが欲しくなる。 というか、それならV634やR634で良い訳だから、やっぱりこの機種は買わないな。 |