伝説のモバイルノートPC dynabook SS 2100 / S7
最強モデル Portege R100(海外モデル)


【dynabook SS 2100 / S7の概要】

dynabook SS 2100とは

 それまでのMobile Pentium IIIベースのアーキテクチャから、Pentium Mという新型モバイルCPU+無線LANをベースとした初代Centrinoアーキテクチャに移行した、東芝初のモバイルPCシリーズの法人モデル。
 コンシューマ用として、ほぼ同等のスペックのdynabook SS S7がある。

 2003年の購入以来、3年間十分に使えた。
 そして、これからもWindowsXPのサポートが続く限りは十分に使えると思われる。
 それは、Pentium M及びCentrinoアーキテクチャが優秀だったことと、独自仕様のメモリ等使いづらい部分を改めた事によるものが大きい。

 ただ、残念ながら選定するグラフィックチップを間違えてしまった。このため、幾ばくかの安定性と将来性が損なわれ、実験機的な存在になってしまった事が残念だ。

 そのことを証明するかのように、東芝から4ヶ月後にチップセットを855GMに切り替えたモデルがリリースされ、本機は本格的に出回る前に消滅したのである。

 ※海外モデルは最後まで855PM+Trident XP32mだった。

■SS2100(法人モデル)とS7(コンシューマモデル)との差異

・販売ルートが若干異なる。

 dynabook SS 2100は一般家電ルートでの供給がされていないため、一般に出回っていない。
 しかし、伝統あるdynabook SSブランドが付いているこのマシンが結構気に入っている。

・リカバリー方式がCD-ROMであり、CD-ROMが標準提供されている

 これはちょっとうれしい。
 (筆者はDynabook SS3480ユーザーのため、純正CD-ROMも持っているから問題無い)

 この時期の、東芝モバイルノートPCのハードディスクリカバリー機能は、CD-R等へのメディアバックアップユーティリティが無いため、ハードディスクが壊れたときはメーカー修理に出さないといけない。

・オプションのバッテリーが標準添付されていない

 結構金目の物だけに、影響の大きな変更である。
 あまり持ち歩かない可能性のある法人ユーザーにとっては、無いほうがいいのかもしれない。
 筆者の場合は頻繁に持ち歩く為、必須装備なわけだが……。

【海外モデルR100】

■国内向けモデルとはココが違う

 海外モデルPortege R100は、東芝の直販サイトで入手することが出来たが、1GHz・1.1GHz版CPUとTridentXP32mを組み合わせたレアなモデルが存在するのが魅力。

 また、メモリ増設上限が1280MBなのも意外な違い。
(何故国内モデルは768MBまでだったのかがよく分からないけど)

 東芝PCの場合、販売後5年ぐらい経つと、何故か海外モデル+日本語キーボードという組み合わせが出回る。

 問題なく動くPortege R100、欲しいですね……。

【各機能ごとの詳細】

■処理性能について

・CPUは素晴らしい

 dynabook SS シリーズで初搭載された Pentium-Mは、クロック数そのものが従来機種より微増している事もさることながら、クロックあたりの性能が劇的に改善され、飛躍的にパフォーマンスが高まった。

 別に東芝の手柄でも何でも無いのだが、閉塞感のあったモバイルPCに大きな風穴を開けてくれたと思う。

・グラフィック性能は期待外れ

 せっかくディスクリートのグラフィックチップを採用しながら、採用アイテムをTrident XP4という怪しげな製品にしてしまったばかりにこの体たらく。素直にMobile Radeonにしておけば良かったのに……。

 NECがサブノートのLavieJを超軽量型から高性能タイプに逆行させた時、Radeon7500を搭載させた。
 どうせならこういうメジャー物にすれば良かったのに……。

 これが、dynabook SSシリーズの最高傑作であり大失敗作と言われた所以である。

 dynabook SS S7のグラフィックドライバに関して、3DMark2001の成績を偽装する、いわゆる「チート」と呼ばれる反則を行っている事がPCWatchの記事で発覚し、ゲームの出来るモバイルPCという評価は一気に覆った。

 ファイル名を見て、ベンチマークソフトのそれであれば画質を落として速度を稼ぐという事をしていたのだが、ベンチマーク以外ではスピードが上がらないのである。

 東芝もさすがにまずいと思ったのか、チートしていないドライバを提供したが、一度ケチが付いてしまうとなかなか評価は覆らない。Mobile Radeonより高速と言われても、なかなか信用し辛い部分がある。

 おまけに、ドライバを開発させようにもTrident自体が消滅してしまったのではどうしようもない。結局後継機種は855GMというメジャーなチップセットに換装されたため、国内ではマイナーなだけの存在になった。

【参考リンク】

 PCWatch 笠原一輝のユビキタス情報局

 ノートPC向けGPUの3D描画性能をチェックする
 〜MOBILITY RADEON、GeForce FX Go、
 そしてTrident XP4の実力は?

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0530/ubiq7.htm

・ハードディスクは明らかに1世代前の性能

 1.8型ハードディスクの性能は、残念ながらさほど高くない。
 40GBモデルは劇的に改善されたとはいえ、2.5インチの5400rpmといった高速ドライブには到底及ばない。

 世代が新しくなるごとに改善はされているけれど……。

■拡張性について

・メモリ増設は問題なし

 旧型機までの独自仕様メモリは廃止され、ごく一般的な200PINのSO-DIMMが使えるようになった。
 PC2100のDDR。1スロットだが、これは他社製品も同等なので、問題ない。

 カタログ上の増設上限は768MBとなっており、WindowsXP上でOfficeアプリケーションを使う程度の一般的ビジネス用途であれば十分である。

 ちなみに、海外モデルでは1280MBまで搭載出来ることになっており、1GBモジュールが当時国内に出回っていなかったため、カタログに載せられなかっただけと思われる。チップセットのスペック上は十分であり、実際に問題なく動作しているとの報告もちらほら見受けられる。。

・ハードディスクドライブ(HDD)脱着は簡単

 徐々に1.8インチの利用機会は高まってきているが、日立とシーゲートが2.5インチと同じコネクタを採用した1.8インチドライブを開発しているため、長期的には駆逐される気配があった。
 が、iPodに搭載されたおかげもあって、駆逐されるどころかしっかりと残ることになった。

 また、バルク品も秋葉原の一部の店舗では出回るようになっており、交換作業そのものは容易なため、後から出た高速型に積み替えて動作速度を改善することもできる。

 裏蓋のネジを一本外すだけで、HDD交換出来る。モバイルパソコンにしては異例なぐらい簡単な作りである。

 耐衝撃性を確保するためかHDDはコネクタにはめ込まれているだけで、筐体にネジ止めされていない。ゴムのジャケットを外すときに少し伸びてしまうが、若干粘着性のある材質なので、再利用も支障なかった。

 東芝1.8インチHDDは5mm厚と8mm厚の製品があるが、本機は標準で8mm厚を採用している。

 筆者は60GBに交換してみたが、問題ない。スピードも上がって言うこと無しである。

 ただし、1.8インチパラレルコネクタ仕様のHDDは2007年暮れに製造終了してしまったとのこと。
 流通在庫を早めに入手するか、SSDやCFカードインターフェースに変換するアダプタが市販されるようになったため、今後はゼロスピンドルPCに仕立てるのが良いと思う。

・USBがシリーズ他機種より1個少ない2個

 USB端子が3個付いているSSも多い……というか、CF内蔵タイプは基本的に3個だが、dynabook SS 2100はCFカードスロットモデルが存在しないため、2個である。

 ちなみに、Dynabook SS3480時代は電力不足だったが、SS2000シリーズ以降は改良されているため、2.5インチドライブのリムーバブルHDD程度なら、ちゃんとバスパワーで駆動できる。

・SDカードスロット

 登場当時はホントに必要かと思っていたが、携帯電話に標準搭載されるようになってからは、CFスロットよりも重要な装備となった。1GBまでのメモリが使えるので、ちょっとしたデータ交換に便利。(注:当初2GBと書いていましたが、1GBまでしか認識しません!)

 携帯電話のデータを読み書きする場合に備えて、MiniSD→標準SDの変換アダプタを常時SDスロットに入れておくことを推奨していたが、2008年以降普及が始まった2GB版以上のSD/SDHCには非対応のため、USB接続のアダプタを持ち歩こう。

 あるいは、携帯はそんなに量があっても仕方ないので、1GB程度にしましょう。

 AirH"のSDスロット用モデルは使えないので注意すること。
 ま、高くて遅いので普通使わないが……。

・赤外線ポートが無い

 筆者は使わないのでどうでもいいが……dynabook SS S4〜S6と、dynabook SS S8〜S9には付いている。
 つまり、dynabook SS 2000シリーズで付いていないのはdynabook SS S7のみ。

 筆者は携帯電話ともSDカードでやりとりする機会が増えたので、無くても問題ないと思っているが。

・その他

 プレゼン等で必要になるCRTコネクタは変換コネクタ等の余計な物が必要ない。 ただ、設計年次が古いので、ワイドモニタ用の解像度はないので注意。

 IEEE1394が無いが、ほとんどUSBでカバーできるので、利用頻度を考えると無くても良いはず。(そうこうしてるうちにIEEE1394が消滅してる)

■可搬性について

・本体剛性

 薄さの割に、非常に剛性が高い仕上がりになっている。
 確かdynabook SS S4がデビューしたときもボックス構造で剛性を高めたと言っていた気がするが、明らかに剛性が高まっている。

 また、旧3400系のdynabook SSは廃熱があまりうまくなく、筐体の熱がバッテリーに伝わって劣化を早めるという情けない設計になっていた。
 (触ると異常加熱している事があった……)

・持ち運びに便利なサイズ

 286mm(幅)×229mm(奥行)×14.9mm(最薄部)〜19.8mm(高さ) 1.09kg

 実際にはA4サイズより若干大きいが、薄い事もあって鞄には入れやすい大きさとなっている。いや、ちょっと大きい、かな。(メーカーもさすがにB5サイズノートという表記はやめてますが)
 特にスリムショックの名の通り、他社製品では20mm台後半〜30mm台の厚みがあるのに対して、本機は20mmを切る薄さに、性能を押し込んだところが立派。

 ただし、後述するが圧迫には注意すること。

・バッテリーは良い

 標準バッテリーは、1時間以上余裕で使えるし、熱対策がうまくなったためか劣化も以前ほどではない。
 ただ、持ち歩くのであればオプションの大容量バッテリかACアダプタのどちらかを用意した方が良いと思われる。

 ちなみに、dynabook SS S7は大容量バッテリを標準装備していた。重量を語るときは軽量バッテリー、駆動時間を語るときは大容量バッテリーの値を言えば良いので、ある意味便利であった。

 今回はほとんどバッテリーが熱を持たないため、寿命も延びそうである。
 大容量バッテリーについてはCPU直下にあるためか、多少熱を持つようである。
 筆者は大容量バッテリー充電モードとして、AC接続時もパワーセーブする設定を作って対応している。

 なお、リチウムポリマー型電池のため、汎用の電池が使えない。バッテリー再生サービスは期待できないので、注意が必要。

・液晶は圧迫に弱い

 上蓋を押されると、バックライトの反射板が損傷し、黒いしみとなってしまう事がある。
 一応保証対象とのことだが……dynabook SS 2000シリーズの持病である。

 dynabook SS 1600シリーズで、液晶側の設計を変更したら解消された。また、最新のdynabook SS S20シリーズ以降でも剛性は上がっているらしく、黒シミの報告は聞かなくなった。(ただし、割れる・・・)
 dynabook SS S4〜S9およびdynabook SS 2000〜2120までの病気である。

 また、シミとは別に持ち運んでいるうちにキーボードの跡が液晶に付くようになる。
 ただ、跡は傷になっていなければ、中性洗剤を付けて無理矢理拭けば何とかなってしまう。

 いずれにせよ、添付の布は必需品だ。飾りではない。

・モールのメッキは弱い

 dynabook SS 2100 / S7 に切り替わった時点で、モールの材質が変更された。メッキだが、一箇所はがれると、あっという間にはがれてくる。
 こんなもんだと諦めること。成金趣味のようなメッキなので、はがれて白色になった状態でいいと、筆者は考えている。

■使い勝手

・キーボード

 相変わらず19mmフルピッチ1.7mmストロークの良好なキーボード。

 筆者は東芝のキー配列に慣れてしまったので、多少贔屓が入っているかもしれない。
 Fnキーがカーソルキーの横にあるというのは、他社PCユーザーにとっては違和感のある配列かもしれないが、109キーを再現しようとしてスペースキー右が詰まってしまっているPCが多い中、右Altと右Ctrlをあっさり切り捨ててFnキーを配置したこの配列は、筆者にとっては好みである。

 PgUp・DownとHome・Endがカーソルキーに割り当てられているのだが、Fnキーが横にあるおかげで片手で操作できる。
 また、旧dynabook SSのキーは初期反発力が強く、ストロークが無いため、底打ちするまでクリック感の無いキーだった。
 新型について言うと、ストロークについては増えていないようだが、軽くなったために非常に打ちやすくなっている。また、適切なクリック感が得られるようになったため、疲労度は明らかに少なくなったように思う。素直に評価したい。

 少しだけ難点を言うと、カチャカチャ音が多少大きいことだろうか。普通に使う分には問題ないが、静かな場所でガシガシ入力するのは少しはばかられる。

 キートップの文字が印刷で、使い込んでいくと削れて消えていくのはNG。道具として酷使するだけに、もう少し気遣って欲しかった。レーザー刻印が望ましいのだが。

 ※底打ち……キーを底まで押さえつけてもなお押す力が余っている押し過ぎの状態。指に余計な力が掛かるため、疲れる。

・タッチパッドはイマイチ?

 タッチパッドドライバが悪いのか、時々反応しなくなることがある。
 原因不明。

 Qosmioでも同様の現象が時々発生するので、東芝PC共通の問題かもしれない。

 場所はちゃんとキーボードのホームポジションの中心線とタッチパッドの中心線が揃っているし、タイピング時に親指や手のひらが触れて誤動作することもほぼ皆無なので、良好と言える。

・液晶はシミが……

 12.1インチの低温ポリシリコンXGA液晶。

 こんなもんだと思うが、実はコントラストの表現が下手な液晶である。
 淡い青と淡い緑の見分けが付かない等々、色再現性には難がある。

 何よりも可搬性の欄でも述べたが、黒シミが最大の欠点。使い込むと、黒くぼんやりした影が斑点のように表示されるようになってしまう。

 東芝松下「LTM12C328」及びその代替品(型番失念したがシャープ製品)が入手出来るなら、交換してしまえばいいのだが、新品を購入すると大体3万円ぐらいになるようである。

・スピーカーはモノラル

 一応、書いてみた。
 ボリューム調整ダイヤルは存在しないため、音量調整はキーボードから行う。
 BEEP音がかなり大きいので注意すること。

・リカバリおよびハードディスク消去機能

 法人用モデルはCD付属。本当にハードディスクまで潰したときには重宝する。

 PCカードモデルの場合、東芝純正以外では松下電器等、ごく一部のメーカーのドライブでしかリカバリ出来ないが、USB接続型であれば、メーカーを問わず利用出来る。

 dynabook SS S7はハードディスクリカバリだが、東芝製ノートは未だにハードディスクリカバリ領域のバックアップが出来ないので……。

 CDの場合はキーボードの「C」キー、ハードディスクリカバリの場合は「0」キーを押しながら電源を入れることでリカバリメニューが表示される。

 特筆すべきは、ハードディスク消去モード。昨今、売却や廃棄の際にハードディスクに情報を残さないようにと厳しく言われているが、本機は標準でアメリカ国防総省推奨方式での消去が出来るようになっている。

 Let'sノートや本機の標準消去は恐らく0を全セクタに書き込むだけだが、業者が本気で残留磁気のピックアップなどをすると、データが吸い上げられてしまう恐れがあるため、場合によってはこちらをお勧めする。

 また、標準の消去モードも、HDDに不良セクタが出来た場合に代替セクタ処理を強制的に実施させる為に使える。(読み込みではなく、書き込みエラーが出たときに、代替セクタを使うようになるので、あらかじめ全域に書き込む事には意味がある)

■その他

・デザイン

 旧モデルの方が良かった、カナ。
 見た目の違いは、モールがメッキになったことと、タッチパッドの色が黒色になったこと。
 後は余計なことかもしれないが、【・・dynabookより、Dynabookの方がシャープな感じでよかったと思う。

【改造情報】

・クロックアップ

 無理。ハンダで固定されている。この薄さでソケット付きを期待するのが間違い。

・内蔵無線LANモジュール

 バラバラにする覚悟さえあれば、無線LANカードはminiPCI接続されているため、802.11b→802.11gに更新する事が可能である。

 (※厳密には違法とのこと)

 起動時にCentrinoのロゴが出ていたのが、PentiumMに変わるらしい……。
 確かに、Centrinoではなくなるが、そこまでこだわるか?

・0スピンドル化

 東芝1.8インチパラレルインターフェース用CF変換アダプタを用いる事で、比較的容易に0スピンドル化出来る。

 ジャンパピンが邪魔になる事があるので、ピンを折ってハンダでショートさせる等の改造が必要になる場合もあるが。

【その他】

・壊れたとき

 普通はサービスセンター送りだが、部品だけ入手して自分で交換する場合は、チチブ電機で購入すること。

 海外モデルの部品は無理だが、国内の部品であれば大抵入手可能。

 ホームページの価格表はほとんど更新されていないので、直接電話して聞く。


リンク

dynabook SS 2100 (2003年3月)

dynabook SS S7シリーズ(2003年3月)

本田雅一の「週刊モバイル通信」第197回:CentrinoノートPCに込められた哲学〜その4 dynabook SS S7の場合

ITmedia:Centrino搭載ノート、各社の製品コンセプト:小型軽量化をさらに追求した東芝「dynabook SS S7」

ITmediaNews:「dynabook SS S7の3D性能がTi4200並み」は本当なのか

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作成日:
最終更新日:2009/9/21

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