【概要】■東芝会心の一撃2008年に登場したネットブック(UMPC)は、ノートPCの勢力地図を塗り替える勢いで普及した。 東芝が大手メーカーとしてはきわめて早いタイミングでリリースしたのがNB100。 マイクロソフトが作ったULCPC(Ultra Low-cost PC)という、WindowsXPの格安ライセンス提供を受けられる仕様制限の範囲内で、海外メーカーに負けない安いWindowsマシンを試しに作って販売してみるという腰の引けたコンセプト(もちろん、東芝公式発言ではなく筆者憶測です)からか、「TOSHIBA」ブランドであること以外、アピールポイントの少ないマシンだったように思う。 極論すると、「dynabook」と間違って買わないよう、使いづらくなるぐらい小型化してあったり、その割に軽くなくバッテリーも持たない仕様になるなど、十分に差別化されていた。 ところが、2世代目は「dynabook」の名に恥じないだけのスペックを装備してきた。 いや、ULCPCの制限範囲で作ろうとすると、どうしても最新型のPCとは比較にならないロースペックになってしまうが、制限されていない部分を徹底的に作り込むことで、己の看板ブランドを託すに足る実用性能を備えた。 ■dynabookになった理由NB100とdynabook UXの思想的な違いが端的に表れているのが、キーボードである。 NB100では15.9mmピッチだったが、UXでは19mmピッチ。 UXのキーボードはRX他のキーボードとは形状が異なるが、まず絶対的な大きさを一般的なノートと同サイズに変えてきたことを激しく評価したい。 そして、キーボードの大きさに合わせ、8.9インチから10.1インチに液晶もサイズアップ。 出先でメールを読んだりgoogleの検索語を入れるだけか、メールを受信したりOfficeソフトを使って資料に手を入れる気になるか、というぐらい違う。 【各機能ごとの詳細】■性能は各社横並びもはや、ネットブックはマイクロソフトとIntelの政策によって性能が決まっていると言っても過言ではない。 CPUとWindowsOSを廉価に仕入れる為、スペックに上限を設けられており、各社その上限一杯でリリースするため、性能は横並びになるわけである。 ATOM N280(1.66GHz)+1GBメモリ(2GBまで増設可)+1024×600液晶で、160GBのHDD。 メモリはDDR2-533で空きスロットは無いため、最大容量にするためにはメモリモジュールを入れ替える必要がある。 ■マイナーチェンジ情報2009年秋冬のWindows7モデルからは250GBに増強され、802.11b/gのみだった無線LANが802.11 a/b/g/n対応になった。 2010年春モデルでATOM N450(1.66GHz)に変更され、64bit対応となった。また、チップセットも変更されている。 2010年夏モデルでATOM N455(1.66GHz)に変更され、メモリがDDR2からDDR3に変更となった。メモリ搭載量、上限には変更無し。 大きな変化ではないが、結構な変化である……。 ■サイズ比較SS1600 268mm(幅)×210mm(奥行)×27.8mm(最薄部)〜34.6mm(高さ) 1.1kg 実はUXはdynabook SS1600やS30シリーズに近い寸法を持っている。 厚めのSSシリーズと比べても分厚い。設計上全く無理をしていないことが分かる。 液晶が小さく、幅が随分小さいくせに重いのは、軽いが高いマグネシウムパーツを避けて、安い金属とプラスチックの厚みで剛性を確保したのだろうなと推測できる。 肉厚ではなく機能を削って軽量化するというアプローチは面白い。普通のノートの作り方でも、1スピンドル化と小型液晶で筐体を小さくすれば、最新鋭モバイルPC並に軽くできると言うことだが、ネットブックの中では特筆出来るほどの物ではない。 ■デザインスノーホワイト、コスミックブラック、サテンブラウンの3色でスタートし、2010年春モデルでデニムブルーが追加。ストライプが彫り込まれ、デザイン面にもこだわりが感じられる。 NB100より薄くなっており、鞄への収納も楽になった。 ■キーボード19mmピッチのキーは使いやすい。キー形状が、Macやvaioのような独立型になっており、若干の安っぽさを感じる部分も無いではないが、普通にブラインドタッチ出来るネットブックが今まで無かっただけに嬉しい。 さすがに右端は小さくなっているが、この程度なら慣れでどうにかなるレベル。 ■小さいが綺麗な液晶ネットブックを買う場合、必ず画面サイズの壁にぶち当たる。 UXも10.1インチワイド型で1024×600という解像度を持つが、特筆すべきはLEDバックライトのClearSuperView液晶ということ。 ツルテカ光沢液晶だが、AR処理も施されているとのことで、反射が抑えられる。 反射処理さえきちんとしておけば、光沢液晶の方が当然キレイで嬉しい。 後は、解像度を我慢できるか否かが、この機種を使えるかどうかの分かれ目になりそう。 ■HDDは衝撃対策機能付き3次元加速度センサー付きHDDが採用されているため、持ち歩いている時に発生しがちな振動や落下障害にも強い。 SSDモデルは無いが、そこまで金を出すなら上位機を出す方が良いという考え方もあるだろう。 ■無線機能2009年夏の登場時は802.11b/gのみだったが、2009年秋冬モデルでWiMAXが追加されたり、802.11 a/b/g/n対応になった。 ■インターフェース類は普通SDカードスロットはSDHC対応。一般的な仕様。 ■WEBカメラ搭載利用するかはとにかく、30万画素のCMOSカメラが液晶上部に取り付けられた。 WEBカメラとして利用できるため、Skype等で顔を相手に見せたいときには便利? ■Office2007 2年ライセンス版価格を下げるためと思われるが、Office2007の2年限定版がバンドルされているモデルもある。 ■NB100から退化した点メモリースティック/メモリースティックPROに対応しなくなったので、ソニーのカメラやPSPを使う人にはちょっと残念な仕様改訂。 Bluetoothも装備から外された。 また、NB100では180度開いていた液晶パネルが140度程度に制限されることになった。 【開き直った東芝のネットブック戦略】■明らかに格上の機能を提供するネットブックは、性能が政策的に頭打ちとなっていることや、低価格が求められているため、あまり一流メーカーと弱小メーカーの違いが出にくい。 デザイン面だけで言うと、海外メーカーの方がオッと驚く提案をしてくることも多かった。 NB100などは、価格の安いノートパソコンという事で作られたと思われ、あまり魂がこもっている雰囲気ではなかった。 だが、明らかにUXはベースからして違っている。 絶対的に、液晶が小さく解像度が低かったり、あるいはCPUが遅いというハンデはあるものの、本当に使いやすい小型PCに仕上げるため、キーボードにこだわったのはある意味正解である。 要は、ネットブックの要件に引っかかる部分は、その要件を満たすよう制限されているが、それ以外はdynabookと同等の品質なのである。 安い1スピンドルのモバイルPCが欲しいというニーズは確実に存在するため、ある意味RX2やNXで吸収出来ない客層へのアプローチができる。 確かにCPU性能は一昔前のPC並ではあるが、足りなくはない。メモリが2GBまで積めるので、Windows 7もある程度安心して動かせる。RX1の初期モデルよりよっぽどたくさんメモリが積めるのだ。 dynabookの下位モデルとして、検討に値するモデルだと思う。 |
リンクネットブックPC dynabook UX (2009年6月)ネットブックPC dynabook UX (2009年10月) ネットブックPC dynabook UX (2010年1月) |
作成日:2008/10/1 最終更新日:2011/1/30 |