PC98の傑作機

9800シリーズは数々の名機を輩出してきた。
16ビット時代は、出る機種全てが名作だった。
そんな中で、今でもコレクション用、もしくはPC98環境保存用として購入するに値すると思われる数台をチョイスしてみる。


NEC

PC-9801VX01/21/41 (80286-10MHz)

VX0/2/4の改良版。80286-10MHzを採用し、またV筐体最後の継承者となったマシン。
PC-286対抗として、NECが威信を掛けて送り込んだマシン。
EGCをDISKBASICからも使えるようになり、BASICプログラムの実行速度ではPC-286を遥かに凌駕した。
VM時代のV30からクロック数こそ変わらないものの、実質速度は圧倒的に速かった。
この機種まで、CAPSとカナがハードスイッチで、キーボード自体もごつごつしたタッチだ。
筐体が馬鹿でかいので、置き場を考える必要がある。
特にハードディスクモデルは幅が大きく威圧感があった。(その最たるものはXLダブル……)  

PC-9801RA21 (80386DX-20MHz)

「9801」としては最初の32ビットマシンRA2/5は、専用メモリスロットに最大5.6MBまでしか増設できないなど、中途半端な設計が目立った。
RA21は設計を大きく刷新し、またCPU動作速度も20MHzに達した。
また、この頃の98は旧来の機種との互換性を保つためにV30を一緒に搭載していたが、RA21はツインCPU構成最後の機種となった。
後継機のDAはFM音源内蔵だが、V30を搭載していなかったりBIOSのチューニングを実施した影響で、V30命令に特化したソフトの互換性が若干落ちるなどのマイナスポイントもあるので注意が必要だ。
(ほとんどのソフトは動くから、一般的にはDAをお勧めするけどね……)  

PC-9821As (80486DX-33MHz)

筆者も一台所有する、最初のMATEである。
前年、エプソンの「98PROGRESS」旋風が吹き荒れ、486GR/GFに根こそぎマニア層を持っていかれたかに見えたが、FELLOW/MATEの二本立ては非常に魅力的に思えた。
極端に価格を切り下げたFELLOWと、本流を歩みつつDOS/V機にもにらみを利かせるMATE。
実際、Windowsマシンとしては後継のAs2の方が優秀だったが、共にWindowsマシンとしては戦力外通達を受けた今となっては、より98らしい(=DOSレベルで旧機種との互換性が高い)という点でAsに軍配が上がる。

ソフトの互換性などではこの機種を境にどんどん98らしさが失われていく事になる。
ちなみにB-MATEシリーズは9821グラフィックを持っていないなど、「9821」を名乗るには、仕様に大きな問題があるように思う。  

PC-9801NL (V30HL-16MHz)

超軽量マシン。歴代98の中では最も軽いのではないだろうか。
重量を1キロ台前半に抑えたのは立派だ。
しかし、このマシンはV30HL-16MHzとCPUが少々非力な事に加え、反射型液晶が嫌われ、思ったほど販売量を伸ばせなかった。
重厚長大なラップトップから脱却しようとしていた時期のモデルで、現代のサブノートに通じる物がある。

EPSON

PC−286L (V30-10MHz)

初期PC−286シリーズのラップトップ。
出荷遅れなどの問題はあったが、初のフル98スペックラップトップであった。
正確にはV30搭載で、80286マシンではない。
また、液晶は2階調白液晶で、カラー版ソフトを使用する時は、カラーパレットのON/OFFによって画面表示を調整する必要があったが、白液晶の見やすさはカラー表示の不要なビジネス用途ではむしろ歓迎された。
このマシンはNEC系大手ディーラーの大塚商会でも扱うこととなり、当時としてはNEC王国に風穴を開けたとしてかなり大きなニュースとなったのである。

仕様を見ても、脱着可能な液晶パネルやラップトップ用拡張スロットのLスロットなど、当時としては相当に意欲的な物だった。
後に8階調液晶を搭載したLEや286搭載のLFに発展。
大型ラップトップのLS系、ノート・ブック系なども登場するが、全てはこの「L」から始まったのである。 

PC−386NOTE A (386SX-16MHz)

98系ノートパソコンを一気に進化させたスーパーノートパソコン。
脱着可能なハードディスクパック、98では不可能と言われていたレジューム機能も、全てはこのマシンに初めて搭載された。

NECも大いに慌てたか、次のNS/EではNOTE Aを大いに意識したスペックとなった。
そして、そこで搭載された数々の装備は、その後9821シリーズが出るまで98ノートの基本系となったのである。

エプソンのノートが本当の意味でNECを慌てさせ、製品仕様に影響を与えたのは、このNOTE Aが最初で最後だったかもしれない。
そう、この後エプソンノートはNECの後塵を拝し、長く低迷を続けたのである。

PC−386NOTE AR (386SX-25MHz)

液晶交換可能、専用高速メモリ搭載可能、CPUボード交換可能、FDD2ドライブ装備、HDDパック交換可能、98ノートバス採用……。
筆者の父も購入したが、当時としては完璧な98互換ノートパソコンだった。

惜しむらくは、全てが不発に終わった事……。

確かにカラー液晶への交換は可能だったが……高すぎた。(おまけにVGAへの交換は不可)
486SX−25MHzへのCPUボード交換が7万だったのは良かったが、エプソンに送り返さねばならなかったのも……。
一般売りしてたら良かったと思うが、今となっては入手もできん!!

ちなみに、このマシンのCPUはAMD製の386SX互換CPU。
このCPUを搭載した事で、インテルとの仲が悪くなった……との噂も。(intel in itキャンペーン実施してたし)

後継機の486NAS(通称茄子)はインテル製CPUを使用、FM音源内蔵など、さらに携帯ゲーム機としての可能性を広げていった。
筆者も「茄子」を羨ましく思いながら、NARを使っていた。
本当ならば、完成形であるNAS辺りを傑作機として推すべきだろうが、筆者はあえてこの基本骨格を作り上げたNARを評価したい。

PC−486GF (486SX-16MHz)

98プログレスを我々に見せつけたエプソンの力作。
ODP対応(ライバルの9801FAは非対応)や、3ドライブ構成可能な筐体、最大63.6MBまでメモリ増設可能な設計、ローカルバス採用……。
兄貴分のGR(486-25MHz)はハイレゾ機能搭載などの余分な機能を付けたために高価になってしまったが、 GFは安価に高性能を提供した。
さらに、マニアの間ではクロックオシレーターを交換したGFR化が静かなブームとなった。
エプソンの独創的な設計はそれだけにとどまらず、最終的にはCPUボード交換でPentiumマシンになってしまった。(60MHzが60万円という信じられない値段だったから、公約を守ったに過ぎないが……)

だが、一度沈みかけた太陽は、二度と昇る事が無かった。
この後、エプソンPCが市場で主導権を握ることは無かったのである。
独自仕様を目指した事が、自らの寿命を縮めるとは予想だにしなかったに違いない。


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なし

作成日:
最終更新日:2007/12/1

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