PC9800シリーズの失敗作
売れなかったパソコン

9800シリーズは数々の名機を輩出してきたが、一方で多くの失敗作も作った。
そんな中で、特に顰蹙物のマシンをピックアップして世にさらしてみる。
なお、Pentium時代にも色々出ているが、この頃になると98を買うことそのものが失敗なのではないかと思われていたフシもあるので、敢えて取り上げないようにする。


NEC

PC-9801VF

何故登場したのか分からない粗悪VM。
メインメモリが384KB→256KBとなり、フロッピーも2HD/2DD自動切り替え→2DDオンリーと格下げ。
おまけにCPUも10/8MHz→8MHzというわけで、ことごとく安作りになっていたが、値段は大して下がっていなかった。
2HDドライブを増設すればVM以降対応ソフトも動くはずだが、如何せんコストパフォーマンスが悪すぎる。
実際、誰が見てもVMの方がお買い得で、F/M後継機としてそれぞれのラインナップを残した理由が筆者には分からない。  

もちろん、PC-9801F2からであれば、128MB→256MBとなり、V30もついてパワーアップになったと言えるのだが……。

PC-H98S

個人的には期待したが、結局タダの金食い虫だった。
32ビットバスのNESAを普及させるため、ハイレゾ表示をカットして安く提供したマシンがこれだが、H98シリーズそのものが結局不発に終わり、おまけにWindows98が動かないというだめ押しまで受けてしまった。

しかし、このH98シリーズは割とCPU性能が高いモデルが格安で中古市場に出回っているため、美少女ソフト用マシンとしての購入を薦める怪しげな本も多々あった。
大丈夫かなぁ……。

 なお、写真はH98モデル70。最初に登場したモデルである。

 PC-9801BA

初代Fellow。BXにDX2-40(この40MHz版というのがまた胡散臭いが)を搭載しただけのマシン。
値段が不当に高く、実はBXとIntel扱いのODPを買った方が安かったりもした。

素人にはなかなかお勧め致しかねるが、浮動小数点演算を活用されたい法人で購入されたところもあったとか無かったとか。

PC-9821Bf

120万円という信じられない値段で登場した98初のPentiumマシン、PC-9821Af。

一年も経たないうちに半額で同等のCPUを搭載したマシンが登場した。
それがBf。60MHz60万円。

今にして思えば、これでも冗談みたいな値段だったが、当時も冗談としか思えなかった。(苦笑)
確かに当時のDX2-66に比べれば高性能だったが、所詮はB-MATE。

Pentium-60を採用したマシンがその後も登場しているが、ソケットがその後のP54Cと異なるため、結局全部ゴミになったような気がする。

Pentium-75以上を搭載していれば、それなりに延命方法もあったというのに……。
高いパソコンを買って、将来性も無かったという事か。何とも言えん。

一応、Pentium Over Drive Processor(PODP)で120MHzまでは到達できたが……。

PC-98DO+

どちらかというと「迷機」だと思うが、取り上げてみた。
前作PC-98DOは98VMと88MHを足して3で割ったぐらいの機種だった。(2で割らないのがポイント)
既に286機は当り前、32ビット時代の夜明け間近となっていたご時世に堂々とV30-10MHzで登場させてきた。
また、限りなくゼロに近い拡張性……。(Cバスが1本)
DO+は、CPUをV33-16MHzに換装し、どうにか286-12MHz相当のスピードを発揮させるに至った。
まあ、この速度なら少し我慢すれば98ソフトも動くでしょ。
また、88部分がMA相当にグレードアップしたのもポイントである。

とはいえ、「騙されて買う」という意味合いの強いマシンではあった。
既に陳腐化し、引導を渡された88を内蔵している事が売りだったぐらいだもん。
筆者もDO/DO+を購入した人間を何人か知っているが、あまり幸せそうにはしていなかった。

だが、VMと88の両方を揃える事を思えばリーズナブルな選択ではなかろうか??
オークションではプレミア付きで取り引きされてるらしい。
誰が買うんだ?(苦笑)

 写真は98DO。V30搭載の凄い奴だが、98のゲームは遅くてあまり使い物にならず、88のゲームを持っている人間は、それまでの88に286なり386付きの98を買い足せば良いと言うことで、まともな神経なら買わなかったはず。

そもそも時代遅れの88と程度の悪い98を同時購入したがるような輩がまともな事を考えているはずがなく、違法コピーで88ユーザーと98ユーザーの両方からソフト入手できると考えるなど、ロクな奴がいなかったように思う。

もし活用するなら、セカンドバス対応のSCSIカードと専用EMSメモリを用意して1スロットを2役に使わないと、MS-DOSがマトモに使えないはずなので要注意。

EPSON

後半に登場したエプソン互換機は殆どが98の間隙を突くこともできないゴミだったが、エプソンのホームページで最新のSIPを手に入れられないというのはどういう事だろうか。

NECがエプソンガードを撤廃したといっても、2.11組み込みでガードの掛かっているソフトに遭遇する事もある。
それなのに、どういう事?
筆者を含めたエプソン互換機ユーザーを冒涜しているとしか思えないのだが……。

※一応Vectorでチェック解除用ソフトは現在も配布されている

PC−386W(80386SX−16MHz)

携帯用途を主眼に置いた小型ノート……だったが、FDD2基内蔵という設計ポリシーに疑問を感じる。
何を考えてるんだか……。
おまけにHDDを装着しようとすると、FDDを1基外さねばならない。
ハードディスクパックが使えないため、容量を簡単に増やすわけにもいかず、結局ユーザー泣かせとなったマシン。
初心者には2ドライブの方が使いやすいという言い分にも一理あるが、これじゃ何のために小さくしたのか分からない。

PC−486P(486SX−25MHz)

93年1月、価格性能比大幅アップを謳い文句に登場したコンパクトマシン。
筆者の目には、拡張性を削ってコストダウンを図っただけに見えた。
一週間後に登場したMATE・FELLOW連合軍によって、一瞬の下記憶の外に葬り去られてしまった。
ライバルの動向を全く考えていない、安易な製品だったと思う。

エプソンには産業スパイがいなかったという事かもしれないが。 

PC−486HX(486DX2−66MHz)

この辺になってくると、エプソンの出す機種は全部失敗作となってくる。
世界初のPCIバス搭載マシンとなったが、残念ながらコネクタ形状の規定されていない1.0規格を元にしたため、エプソンオリジナルでの実装となった。
当時はインテルもPCIをシステムメーカー向けと位置づけ、外部周辺機器をPCI接続するなどということは考えていなかったらしい。

コネクタはCバスに小細工したオリジナル形式。
NECに先行した不安は無いかとの問いに、「NECが変えてきたら、当社はそれにも対応する」などと言っていたが、何とNECはAT互換機と同じコネクタ形状(=標準品)を採用してしまった。
沈没である。

結局、NECもボードにNEC対応のBIOSを積んでいないと駄目とか、ドライバが無いと駄目とかいろいろあって、最終的に使い物にならなくなるわけだが、逆に当分の間はドライバさえ作ってやればNEC用には対応できたわけで、はなから接続の術もないEPSONとは雲泥の差である。

とはいえ、PCI接続のハードディスクは確かに速かったようだ。キャッシュコントローラー用にSIMMを装着でき、PCI+キャッシュコントローラーの威力で当時としては劇的な動作速度を実現した。
しかし、エプソン純正品は不当に高く、98に対するアドバンテージとはみなしてもらえなかった。(買えないなら一緒)

また、9821グラフィックに対応しなかった事から、これまでエプソンPCを陰で支えていたと思われるゲームユーザーに総スカンを食らってしまった。
これでは未来があるわけがない。

結局、これはエプソンの言い分が正しく、256色以上の多色環境に対応したDOSゲームはほとんど登場せず、多色が標準となるのはWindows95普及後になってしまうわけだが、そのときには既にこのレベルの486マシンは陳腐化していたのである。

マシン自体の性能に問題があるわけではないが、マーケティングや技術動向の読み違いで失敗した例として興味深い。 

PC−486FE(486SX−25MHz)

一段と粗悪度の高まった98互換機。
とにかくコストダウンしか考えておらず、フロッピーがネジで固定されてないとか、タッチが評判良かったキーボードが泣けるほどの安物で、裏返すと底がえぐられてやけに軽いとか、HDDモデルはフロッピードライブを1つにしちゃったくせに増設コネクタすら無いとか、圧巻はリセットボタンも付いていない(キーボードからのリセットも非対応。「電源を切ってください」だそうな)とかで、もう品質劣悪の酷いマシン。

Fellow対策で価格を下げる必要があったのだと思うが、筆者はそこまでやらなくてももう少し策はあっただろうにと残念に思う。

基本設計は前モデルのSE/SRと同じだが、使い勝手は確実に一歩後退している。
技術力で勝負していたエプソンが、投げ売りのエプソンに転換した記念すべきマシンではあるが、旧来からのファンにとっては情けなさすら感じる。

ちなみにイメージキャラクタの「ウィンドウズ君・一太郎君とミスターマルチ(ピーター・フランクル)」は、金の掛け方を勘違いした好例で、今みたいに人気アイドルをCMに起用していれば、もう少しイメージだってマシだったろうに……。


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なし

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最終更新日:2007/12/1

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