忘れられたメリット

失われた国民機PC独自の文化

 PC9800シリーズは、確かに過去の遺物となりつつある。
 しかし、侮るなかれ。
 現在のPCをも凌駕する、いくつかの先進機能を持っていたのだから。


リファレンスPC

 98もFellow/Mateシリーズの2世代目が出た辺りから怪しくなってきたが、基本的にソフト・ハード共に上位互換であり、ソフト・ハードを制作した際、特定の98でテストをしておけば、他のほとんどの98で安定動作する。
 ほぼ一社独占(一部セイコーエプソン)の98マーケットだったため、出る機種全てがリファレンス。
 ハードによってソフトの相性問題が発生することは希だったし、動作保証も簡単だった。

 強いて言えば、PC−9821の独自機能は細かい仕様変更が多く、ソフトハウス泣かせだったように思う。
 9801と9821の違いは、640x480/640x400の両解像度における256色グラフィック(及び新FM音源)と言いたいところだが、93年10月に登場したBシリーズではいきなり付いていない。
 いつの間にか640x480の表示機能を持つ、Windows対応パソコンが9821という定義にすり替えられてしまったらしい。
 その後も初期のXシリーズは640x400の画面モードしかDOSレベルでサポートしていないとか(VGA以上はウィンドウアクセラレータにてサポート)、まあいろいろと問題のある仕様ではあった……。
 まあ、9801の範囲で使うぶんには全く問題無かったが。  

Cバス

 もはや性能的に見る点は無いが、筐体を開けずとも増設ボードの抜き差しができる設計は、現在の世界標準PCやMACでは考えられない点。
 メンテナンス性や、またガイドレールがあるための挿入のしやすさなどは、現在のPCでは望むべくもない。
 98も、PCIを搭載し始めた辺りから段々怪しい構造になってきたが……。  

HDD起動メニュー

 システムコマンダー等を導入せずとも、98は複数OSを切り替える事ができた。
 パーティションを分け、それぞれにシステムをインストールするだけでいい。
 起動ドライブにインストールされているOSが起動するため、筆者のようなシロウトでもMS-DOSとWindows3.1とWindows95の共存ぐらいは簡単に行えた。  

かなキー

 変換キーなど、表記は106/109キーボードの方が親切なようだが、かなキーに関しては98の方が上だ。
 しかし、筆者はかな入力の優位性に疑問を抱いているため、あまり問題を感じていない。
 98でかな入力をしていた方には、106/109キーボードはとっつきが悪そうな気もするが……。  

テンキー

106/109キーボードにはテンキーにカンマとイコールのキーが無い。
表計算ソフトを使う時などに多用するので、イコールぐらいは入っていても良いと思うのだが……どうにかならない物ですかね??  

キーボード・マウス差し忘れ

 キーボードやマウスを差し忘れていても、あるいは動作中に抜けて差し直した場合でも、98(Rシリーズ以降)は平然と動作していた。
 それに引き換えPS/2バスは動作中の接続を保証していないので、再起動を要求されること間違いなしである。
 コレもUSBキーボードが解決してくれたが、BIOS設定まで含めてマトモに使えるようになったのは最近の話である。

安定供給

 PC9800シリーズは市場に常に安定供給されていた。現在のように生産調整がうまくいっておらず、常に市場にはだぶつき気味……。(苦笑)
 FELLOW/MATE登場で大幅値下げするまでは、4割5割当り前の大幅値引きが恒常化していたのである。(その値引きがEPSON製互換機の追撃を振り切るためであったことは言うまでもない)

 まぁ、買いたい時に買えるというのは素晴らしい事だ。

 現在もPC9800シリーズは生き残っている。Pentium2の終息に伴い、安易にCeleronを載せたモデルに切り替わっているが、とりあえず440FXが供給される間は提供される見込みである。
 恐ろしく値段が高いが、PC9800でないと困る人にはそれが買えるだけでも良いのだろう。

 また、安定供給という意味ではFC9800シリーズにも注目したい。
 この工業用モデルは何年何月まで供給を続けるという期限を明記してあり、よほどの理由がない限りスペックの変更も無い。
 日進月歩のPC界にあってこれは冗談のような話だが、制御系ではパソコンの性能が上がったがために動作がおかしくなるといった事も現実に起こっているため、システム設計当初の性能を持ったパソコンがずっと供給されるというのは実は嬉しい事なのだ。

 しかし、根幹部品であるCPUやメモリなどは長くNECの倉庫で在庫されていたものを使うだろうから、それが腐ってないか心配になる向きもあるだろう。筆者も心配だ。


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なし

作成日:
最終更新日:2008/10/16

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