名機の予感 dynabook SS S30シリーズ

派手ではないが、良識あるモバイルPC

しかし、この形なら性能重視にすべきだった・・・


【概要】

■名機たり得る意欲作

 2006/8/24に発表されたdynabook SS S30シリーズは、dynabook SSシリーズ久々のヒット作になる可能性があった。
 性能面では完全にVISTAを見据えたスペックになっており、かつ使い勝手に関しても、これまでの機種の良いところをすべて盛り込んだ意欲的な設計になっていると思う。

 久々に自分で買いたいと思えたマシンだし、SS RX1が出た今でも高く評価はしている。

 しかし、それが法人向け専用の2.5インチHDDモデルなら・・・という条件付きなのが悲しい。

■すべてが新世代スペック

 初めてCoreシリーズを搭載した軽量dynabook SSが登場した。

 どうせならCoreDuoモデルでThinkPad X60に対抗してほしい気持ちもあるが、モバイルPCではデュアルコアで無駄に電気を食わせるより省電力をと考えるのが普通だろうから、Core Solo採用にさほど異存は無い。

 とりあえず閉塞感のあったPentium Mから、新世代CPUに移行したことはライバルとの比較も考え、大きく評価できる。

 また、メモリがついに2スロット装備になった。最大の4GBまで搭載するとは思わないが、OSが今後Windows Vistaに移行することを考えると、1GB程度で頭打ちになるより余裕がありそう。実は後継機のdynabook SS RX1(初期型)よりも拡張性が高いのである。

 さらに、シリアルATA接続のハードディスクは1.8インチと2.5インチが選べる。性能重視のユーザーはCFカードスロットと引き替えにはなるものの、2.5インチHDDを選べるのだ。ただし2.5インチは法人モデルでしか選べないのが非常に残念。
 コンシューマモデルしか使っていない人は、ディスクの遅い駄作と感じる人もいるだろう。

 一方、ディスプレイに目を移すと1280×800ドット表示の、12.1インチワイド液晶採用も新しい。文字は多少小さくなるが、表示エリアは広い方が良い!
 ただし、ディスプレイフィルタ(プライバシーフィルタ)等を考えている人は、サイズを良く測ってから購入すること。ワイド12.1インチと称して、1cm程度縦が短い商品が存在するので。

 何か、性能面では今までモヤモヤしていた霧がスッキリ晴れたようだ。光学ドライブをUSB2.0接続すれば、メインマシンとしても十分使えそう。(ただし、2.5インチの法人モデル)

■コンシューマモデルはNG!

 コンシューマモデルは、法人モデルに存在する2.5インチHDDモデルが存在しない。

 見かけの重量を増やしたくなかったのかもしれないが、性能を大幅にスポイルする1.8インチHDDを本機で利用する必然性がどれだけあるのか。

 筐体サイズから、薄くする必要は全くないので、存在意義の薄れてきたCFカードスロットにこだわらず、2.5インチHDDを装備すれば良かったのだ。

 コンシューマモデルで2.5インチHDDモデルが選べなかったことは致命的である。本機の評価が高まらなかった原因は、そんなところにあるのではなかろうか。

 2.5インチHDDとCore Duoの組み合わせが実現していれば、密かに評判の良かったSS 1600シリーズの後継として、ロングセラーになったはずなのに。

 海外モデルにはCore Duoモデル、あったんだけどね……。

 分厚いのに1.8インチHDDで軽量なように見せかけるとは、RX1が軽量化しつつも2.5インチHDDで性能を選んだのと、まさに対照的である。

【各機能ごとの詳細】

■サイズ比較

SS3480 262mm(幅)×214mm(奥行)×19.8mm(最薄部)〜26mm(高さ) 1.34kg
SS2100 286mm(幅)×229mm(奥行)×14.9mm(最薄部)〜19.8mm(高さ) 1.09kg
S20    286mm(幅)×229mm(奥行)×9.9mm(最薄部)/19.8mm(高さ) 1.29kg
SS1600 268mm(幅)×210mm(奥行)×27.8mm(最薄部)〜34.6mm(高さ) 1.1kg
S30   283.8mm(幅)×196.6mm(奥行)×26.9mm(最薄部)〜35.5mm(高さ)1.19kg/1.24kg

 ワイド液晶装備したが、幅は実はdynabook SS 2100より狭い。

 dynabook SS 1600系よりさらに分厚くなってしまい、全然スリムではなくなったが、廃熱の余裕などを考えるとこのぐらいの設計の方が無理が無いのかもしれない。

 SS 2000シリーズに比べると鞄には入れづらいが、安心感はある。

■使い勝手

 筐体そのものはdynabook SS S20が少し奥行きを小さく、dynabook SS 1600並に厚くなった感じである。設置面積の拡大が抑えられたので、ワイド液晶化による可搬性のダウンは無いと思われる。

 また、明らかにLet's noteへの対抗意識からだろうが、筐体の剛性や防水性が一段と強化されているようである。
 液晶のシミはdynabook SS S20で報告されていないことからも、恐らく完全に克服されていることだろう。
 S30も、半年ぐらいでは全くびくともしていない。液晶割れの報告も無い。

 そして、特筆すべき点は、キーボードのサイズがdynabook SS 2000系に戻ったことである。
dynabook SS 1600 / dynabook SS S20の縦や隅のキーが小さいキーボードに対する不満が、やはりユーザーからも寄せられたのではないか。

 キータッチも申し分ない。

 そして、重量を増やさずバッテリー駆動時間はさらに延びた。

 セキュリティ機能はdynabook SS S20と同等以上のため、申し分無い。

 液晶画面が横長になり、縦が短くなったため、実際に表示される文字の大きさは小さくなった。これがややマイナス評価ととられるかもしれない。悪くはない。

【マイナー後のS31はくせ者!】

 dynabook SS S31がリリースされた。どうせCPUクロック数が上がっただけだと思っていた筆者は、カタログなんかろくに見ていなかった。

たまたまヨドバシでdynabook SS SX/17A(マイナー後のコンシューマモデル)の実機を見かけなかったら一生気づかなかったかもしれない。

dynabook S30のキーボード

dynabook S31のキーボード

上がdynabook SS S30、下がS31。じっくり見比べると、違う。

そして、dynabook SS RX1のキーボードを初めて見たときに、何でキー配列変えたんだよと文句を言ったりしていたが、実は、S31の時にコッソリ変わっていたのである。

よく見るとフラッシュディスクモデルもある。

ああ、これはR32GT-Rの影に隠れたR31GTS-Rのような先行導入モデルなのだなと、今更ながらに思ったわけである。あるいは、R34後期モデルのフロントバンパーが、V35のバンパーの意匠を先取りしていたことにも似ているかもしれない。

■新旧およびライバルとキーボードの比較

本サイトでは特別に画像処理技術を駆使して、より比較しやすい画像を作り出すことに成功した!
(ペイントを駆使したとも言う)

まず最上段を見ると、SS S31ではファンクションキー4つごとに仕切りが入っていることに気づく。ThinkPadが良く「コダワリ」と称している部分だが、さて「半角/全角」キーはどこへ行ったのか。

実は2段目が驚きの変化を遂げていた。
SS S30のキーボードでは左に隙間が出来ていたが、SS S31では無理矢理他のキーを縮小して、ここに半角/全角キーを押し込んでしまった!
元々幅に余裕のあるS30系プラットフォーム(?)だから出来た技だが、S20系の狭いキーボードではこうは行かなかっただろう。

Enterキーの列はよく似ているが、微妙にカギ括弧のキー辺りが狭くなっているのに気づくと思う。
また、Enterキーの幅そのものはS30の方が広い。(これは大した問題ではないかもしれないが)
半角/全角を押し込んだ事のつじつまを合わせるため、キーの左側を大きくすべく、TabキーとCapsLockキーの幅がSS S31の方が広い。

同様に左Shiftが大きいのがS31

一番の差異が最下段。
実はサブノートの最下段のキー配列は、メーカー毎の思想の違いが最も色濃く出る部分だと思う。
頑なにWindowsキーを拒んだThinkPadなどはその最右翼だが、右ALTと右Ctrlをあっさりあきらめ、その代わりに比較的余裕のあるスペースキーを与えた設計は一つの良識だったと思う。

S31では、概ねLet'sに近い配置になった。左端のCtrlとFnの配置は昨今のトレンドと逆行しており、実は同社のA4ノートとも逆なのだが、これはどうしたことか?

上下比較したとき、S30S31ではFnキーが挟まったことで他のキーの位置が綺麗に一つずつずれている事に注目!
おかげでAltを押そうとしてWindowsキーを押してしまう間違いが起きやすい。また、Windowsキーを押そうとしてFnキーを押すのも腹が立つ物である。

しかし、これは他社に倣った結果というならまだ我慢しよう。

筆者が思わず考え込んでしまったのは、スペースキー右側のキー数。Lenovo、松下とも右側は4つにとどめている。普通に納めようとすると、B5ノートの幅では収まりきらないので、右Windowsキーと右Altキーは犠牲になる物なのであるが、S31では右Altを無理矢理残し、そのため他のキーを微妙に小さくしてしまった。

この、中途半端にキーの大きさを変えるということをしていなかったのが、SS 2000系とS30のキーボードの最大の美点だったのに・・・。

参考までに、Thinkpad X60Let's Note W7のキー配置も掲載しておく。(ここまでくるとヘンタイだね)

【改造情報】

HDD・SSD換装

 ディスク換装を考えるなら、2.5インチHDD搭載モデルを購入する必要が有る。

 東芝仕様のUltraATA100接続1.8インチHDDと、9.5mm厚SATA2.5インチHDDでは、どちらが将来性が有るかなど、一目瞭然である。

 ただし、2.5インチ版であっても、本機のSATAインターフェースはHDDとの相性問題が報告されているので、事前にgoogle先生を使って、対応HDDを調べることをお勧めする。

 ついでに、認識させるためにToshibaのRAIDドライバが必要なので、事前にダウンロードしておくこと。

 1.8インチ版を買ってしまった場合は、SSDでも探すしか無いわな。筺体設計が異なるため、1.8インチ版に2.5インチHDDを装着するのはほぼ不可能である。

メモリ交換

 裏蓋を開けるだけで容易に交換できる。

 PC2-4200/PC2-3200対応、DDR2 SDRAMを2GB×2=4GBも搭載できてしまうので、実は32bitOSの限界にチャレンジできる。

 後継のRX1よりCPUがシングルコアの分動作が鈍くなるが、メモリがたくさんあった方が良いという向きもあるだろう。特にRX1の初期物は上限1.5GBなので、それに比べるとS30 / S31の優位性が光る。

【感想】

 地味ながら久々に良くできたマシンだと思うが、返す返すもコンシューマ用に2.5インチHDDモデルが出なかったのが悔やまれる。
 法人モデルなら、メモリ増設余力など実質的な性能の有利さから、長く愛用できると思うが。

 厚みを増したことで熱設計には余裕ができたはずで、Core Duo付きモデルがあっても良かったのだが、国内にはとうとう出てこなかった。いつもの事ながら、最後の詰めが甘く、あと一歩で名機になりきれなかった惜しいマシンである。

 S31でキー配列を他社に迎合した形に変更せず、右Altは省略して、キー幅の圧迫を回避することと上位CPUの搭載が行われていれば、間違いなく本機はSS RX1と併売しても良いぐらいの名機になったと思われる。

 ThinkPadで、X40が登場した後もX31やマイチェンモデルのX32が売れつづけたように、可搬性より性能を優先する向きも多いのだから。


リンク

dynabook.com dynabook SS S30 (2006年8月)

dynabook.com dynabook SS S31 (2007年2月)

dynabook.com dynabook SS SX490 / SX495

dynabook.com dynabook SS SX490 / SX495

dynabook.com dynabook SS MX・SX (2007年1月)

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作成日:2006/8/28
最終更新日:2012/10/18

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